UAEは不安定な中東地域でありながらもバランス外交を推進する政治や近年の安定した経済成長実績から、多くの企業を惹きつけています。多くの日系企業は比較的軽い税負担も相まってUAEを中東地域・並びにアフリカ地域進出に向けた重要な拠点として考えています。
また、個人にとっても、きらびやかな生活のイメージや個人所得への課税がほとんどないといった税制メリットから、ビザを発給するためにドバイで法人を設立して移住する方も増えています。
この記事ではドバイで会社設立を検討する際に参考にしていただけるように、必要な手続きや費用感、メリットやデメリットなどを解説します。
法人設立の手続き・期間
法人設立は主に以下の方法で行っていきます。
1 法人の業務内容・形態・設立場所を決定する
UAEはラインセンス制を取っているため、会社を立ち上げる前に事前に業務内容を決定しておく必要があります。フリーゾーンでの法人設立を行う場合、業務内容によって設立できるフリーゾーンが限られてきます。また、個人事業主のような形を取るか、株式会社の形を取るかも事前に決定しておく必要があります。
2 ライセンスの取得
決定した内容をもとにライセンスの取得を行います。必要書類を政府やフリーゾーン当局に提出します。定款や親会社の登記簿謄本(支店設立の場合など)等の提出が必要となります。書類の提出から承認までには1-4週間程度かかることが多いです。フリーゾーンでの設立の方が承認までの期間が早いことが多いです。
3 ビザの取得
取得したライセンスをもとにビザの発行が可能となります。ビザの発行時には本人がUAEに2週間程度、滞在し続ける必要があります。
4 銀行口座開設
銀行口座の開設は年々審査が厳しくなっているため、口座開設まで1~3か月程度の時間が必要になることが多いです。
フリーゾーンとメインランドの選択
ドバイには特定の業種に特化したフリーゾーンが多く存在しており、その数はUAE全体で50程度に上ります。貿易に特化した保税地区・倉庫付きのフリーゾーンやインターネット産業や仮想通貨やweb3.0に特化したフリーゾーンなどがあります。フリーゾーンでは発行可能なライセンスの業種が限られているため、事前の確認が必須です。基本的には業態とターゲット層をもとに設立場所を決定していく方法が一般的です。
なお、フリーゾーンであれば財務諸表を用意する必要も確定申告の必要もなく、税金を全く払わなくていいと考えている方がいらっしゃいますが、それは間違いです。フリーゾーン企業も法人税の対象であり、すべての企業が年に一回の確定申告をする必要があります。そのうえで特定の条件を満たすフリーゾーン企業は法人税0%を享受することが可能です。それ以外にもフリーゾーンに設立する場合とメインランドに設立する場合でのメリット・デメリットがあるので以下にまとめます。
フリーゾーン
- メリット
- 事業内容や取引の内訳など、いくつかの条件を満たせば法人税0%の恩恵を受けられる
- 一部の指定フリーゾーンでは保税地区になっているため、輸出入時に関税やVATが適用されない
- メインランド法人設立よりも手続きが簡素化されていることが多い
- オフィスの賃貸契約の代わりにデスク単位でのスペースの確保によりライセンスが可能
- 会議室などの共有施設を使えることが多い
- フリーゾーンごとのポータルサイトからビザ関連の手続きや貸会議室の予約などが一括で操作できて便利
- 現地人を雇わなければいけないエミラティセーションの対象にならない
- ローカルスポンサーが不要で外資100%での設立が可能
- デメリット
- 主にフリーゾーン内や国外との取引に限定されるため、メインランド市場進出には追加ライセンスが必要(代理店を経由しての商品販売などは可能)
- 保税倉庫を利用したくても空きがない場合などがある
- フリーゾーンによっては監査が必須などの独自の規制がある
メインランド
- メリット
- UAE全域でビジネス展開が可能。
- 発行できるライセンスのビジネス業態に制限がない。
- ローカルスポンサーが大半の業種で不要(2021年の法改正まで必要であった)
- オフィスの設立場所や出店地域が限定されない。
- 政府入札案件への応募が可能
- デメリット
- フリーゾーンと比較して設立手続きが複雑で、オフィススペースの確保も自ら行う必要がある。
- 法人税0%の適用を受けられない。
- ある程度規模が大きくなると現地人を雇わなければいけないエミラティゼーション政策の対象になる
- 法人設立にあたり、複数の政府機関との調整が必要
法人設立場所の選び方
UAEでの法人設立はフリーゾーンが50個あるため非常に多くの選択肢があります。できる限りコストは押させて効率的な運営をできるしたいものですが、フリーゾーンごとに独自の料金表や特典があり、事業に合った設立場所を選ぶことは簡単ではありません。多くのエージェントでは自分たちが経験のあるフリーゾーンやコミッションをもらえるフリーゾーンでの設立を進めるため、適切なフリーゾーンが薦められないケースは多いです。弊社では経験豊富なスタッフが以下のような条件を加味して適切なセットアップをサポートします。
必要なビザの数
- 一部のフリーゾーンは2〜3件のビザ発行には適しているが、それ以上になると高額なオフィススペースが必要になる。
- 一方で、本土企業は初期コストが高いが、規模拡大時のコストが抑えられる。
オフィスの必要性
- フリーゾーンでは、基本的にそのフリーゾーン内でしかオフィスを構えることができない。
- 例えば、DMCC(ドバイ・マルチ・コモディティーズ・センター)に会社を登録した場合、DMCC内にオフィスを持つ必要がある。
事業の所在地
- 顧客がどこにいるのかという観点が重要。
- 例えば、物流や貿易を行う場合には税制優遇策も加味して指定フリーゾーン内で設立し、商流を工夫する必要がある。
価格と将来のコスト
- 最安の選択肢が最適とは限らない。
- 初期費用を抑えても、成長時にコストが増加し、後で法人形態を変更するのは非常に手間がかかる。
ドバイで法人設立するメリット
日系企業や日本人にとって、ドバイで法人設立するメリットは多くありますが、以下に主なものを挙げていきます。
軽い税負担
2023年6月に9%の法人税が導入されましたが、他国と比較すると依然として低い水準であると言えます。また、個人へ課せられる所得税や不動産投資益や株式投資益への課税もありません。
整ったインフラ
世界最大級のジュベルアリ港や空港に隣接した保税倉庫付きのフリーゾーンなど企業活動に必要なインフラが整っています。また、個人の生活レベルでも交通などの都市機能や学校や病院などの生活に必要な設備が整っていて、それぞれ低価格なものから高級なものまで幅広い選択肢がある点は魅力的です。
ビザが発行できる
日本人がドバイへ移住する場合、長期滞在にはビザが必要なります。ビザを発行するためには企業にスポンサーになってもらうか不動産などへ投資をする必要があります。自分で会社を立ち上げてその会社からビザを発給するという手段も一般的です。ビザの種類や選択するフリーゾーンによって有効期間や費用、家族のビザまで発給できるかの要件などが変わってきます。詳しくはお問い合わせください。
ドバイで法人設立するデメリット
ドバイでの法人設立にあたってはデメリットも存在します。こちらも主なものを挙げてみます。
高額な設立・維持費用
法人設立のエージェントへの手続き代行依頼やライセンスやビザの更新には費用が掛かります。また、ライセンスの更新や法人税の確定申告は毎年必要なるので、費用だけではなく手間も継続的にかかります。法人税や個人所得税の節税メリットはありますが、これらの会社の初期費用やランニングコストは決して安いものではないため、事前に把握しておく必要があります。基本的には想定よりも高くなることが多いので、予算は多めに確保しておくことをおすすめします。
頻繁に変化する規制への対応が求められる
近年UAEの規制状況は頻繁に変化しており、場合によっては各企業・個人が新たに対応を始めなければいけないものも少なくありません。例えば、法人税の確定申告は企業の規模にかかわらずすべての企業の対応が必須ですが、関連するガイドラインなどは頻繁に発表されています。外国の規制や法令の変化をリアルタイムで把握することは難しく、専門家の助けが必要となることが多いです。
法人設立に必要な費用
1. 初期費用
- 主要項目
法人登記料、ビジネスライセンス費用、オフィス賃貸料、ビザ取得費用などが含まれ、総額で約100~200万円程度が必要になるケースが多いです。事業内容によってライセンスの料金は変動します。また、ビザの発行可能数はオフィスの広さにも依存するため、多くの社員を雇用する予定がある場合にはオフィス賃貸料の負担も大きくなります。加えて、法人設立代行業者に依頼するばあいには加えて手数料の支払いが必要となります。その金額は50万円から200万円程度であることが多いです。 - 最低資本金
設立場所や業種、発行するビザの数などの条件によって異なる金額が必要になります。
2. ランニングコスト
- 年間維持費
ライセンス更新、オフィス賃貸料、ビザ更新費用などで年間約100~150万円が最低限必要な金額として一般的です。 - 会計・監査・コンプライアンス対応費用
法人税の確定申告はすべての業者に対応が求められ、行わない場合には罰金が科せられます。また、ビジネスの売上金額によってはVAT(付加価値税)の申告も必要となります。また、業態や設立場所によっては外部監査が必要な場合もあります。これらの金額は取引量やビジネス規模により費用が変動します。
ドバイでの法人設立はご覧の通り複雑です。特にライセンス制やフリーゾーンは日本人にはあまりなじみのない概念ですが、できる事業内容に大きく影響します。費用や条件を把握した上で自身のビジネス目的に合った選択をすることが重要です。個別ケースに応じた最適な法人設立方法を提案可能ですので、ドバイ進出をご検討中の方はお問い合わせください。